5Gの電磁波と健康被害は関係あるのか?鳥の大量死や体調不良といったニュースを調べてみる

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5Gの電磁波による健康被害の実態について

第4次産業革命の主要技術の一つである「5G」ですが、各国で導入が始まってから5Gの電磁波による健康被害がいくつか報告されるようになりました。
その影響は体調不良にとどまらず中には流産といった報告まで。
5G導入による電磁波と体調不良の関係について、独自で調査しました。

オランダのハーグでのムクドリ大量死

5Gと健康被害 ムクドリ

結論から言うとこの報道はフェイクニュースです。
2018年11月5日、Facebookの投稿から始まったこの騒動。

2018年10月19日〜11月3日までの間にオランダのとある公園で、合計337羽のムクドリと、2羽の鳩が死亡しているのが見つかり解剖した結果、
毒や外傷といった痕跡もなく、ムクドリたちは死ぬまで健康体で死因がわからなかった。
唯一考えられる原因として、近くの駅で実験していた5G基地局から発する電磁波で、ムクドリの心臓が止まった、 という内容のもの。

様々なメディアでこの投稿が話題となり、報じられました。

5Gの健康被害の話題の際、こぞってこの話題を取り上げられています。
日本でも大手週刊誌の女性自身が報じており、TwitterやYouTubeなどのSNSを調べても、5Gの健康被害を訴える多くのコンテンツにこの話題が盛り込まれています。

しかし、この報道はフェイクニュースでした。

そもそも時系列がおかしい

ムクドリの死体が確認されたのは2018年10月19日〜11月3日の間。
2018年で5Gの実験が行われたのは、Huaweiが6月28日に一度だけ行っただけでした。
そもそも、ムクドリの死体が発見された期間に5Gの実験は行われていませんでした。

電磁波の生体への影響は?

ムクドリが大量に死亡してしまうほど電磁波の影響は大きいのでしょうか?

電磁波が生体に与える影響は主に100kHz以下で起こる「刺激作用」と100kHz以上で起こる「熱作用」という2つの作用に分けられるそうです。
皆さんも使ったことがある電子レンジも、この熱作用を応用して温めています。

こうした作用は科学的に解明されているため、国際的な専門機関によって、人間に害のない範囲で周波数を使うための指針が制定されています。

日本ではICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)の国際的なガイドラインをもとに「電波防護指針」と呼ばれる指針が定められており、電波法によって、指針を守ることが規定されています。

人間に害のない範囲で周波数を使うため、各国でルールを作りましょう
ということです。

オランダでもICNIRPのガイドラインに沿った規制を行っています。(Source:EMF table Netherlands)
Huaweiほどの大企業がこの規制を無視し、生体に影響を与えるほどの高出力の機器の設計やテストの実行を行う事は、倫理的にも社会的にも考えにくく、
また、ムクドリの心臓を止めてしまうほどの電磁波が出力された場合、周囲に存在するその他の生物にも影響が出ることから、5Gの電磁波とムクドリの死の相関性は極めて低いと思われます

Source:電波の生体影響に関する最新動向 ~安全な電波利用に向けて~

※ガンをはじめとした電磁波による未知の作用は「非熱作用」と呼ばれており、
どのくらいの出力の電磁波を、どれだけ、どこに暴露したら、何が起こるのかがわかっておらず、現時点では科学的な証拠がない状態です。
Soruce:非熱作用の研究動向について

【結論】フェイクニュースだった

実は本件、ニュースの事実確認を調査するサイト「スノープス」によってフェイクニュースである、と報告されています。

※ムクドリは実際に死亡しており、300羽を超える死骸が発見されており、原因はまだ判明していないそうです。

サクラメント消防士の体調不良

5Gと健康被害 サクラメントの消防士

CBSのサクラメント局の報道によると、サクラメントの消防署に務める消防士が頭痛、不眠、記憶障害など原因不明の体調不良を訴えた。
別の消防署に消防士たちの勤務地が変わると、今までの体調不良が嘘のようになくなったとのこと。

※日本でもブログやメディアで多々話題に挙がっていましたが、そのほとんどに情報ソースの記載がありませんでした。
CBSサクラメントのウェブメディアを参照したところ、おそらく情報の発端は下記ページかと思われます。
Questions Raised About 5G Risks Before Sacramento Launches Service – CBS Sacramento

情報が少なすぎる

ムクドリの件よりも情報が少なすぎるため、判断がかなり難しいところ。
この件に対しサクラメント市がコメントしている情報は見つけることができませんでした。

しかし、5Gサービスの提供は続いており、安全性についてもウェブサイトで公開しています。
Source:5G Small Cell Deployment in Sacramento – City of Sacramento

CBSのサクラメント局で5Gに関する記事をソートすると、その多くが5G導入に対するネガティブな記事が見受けられます。
さらにサクラメント市では5G導入の反対運動も行われています。

誰が、いつ、どのような被害を受けているのか、医師の見解、専門家の調査など、様々な情報が必要です。
消防士の場合、上司や同僚との人間関係や、仕事量、職場の環境、家庭環境、本人の体調など、様々な情報を無視し、5Gの電磁波を原因としています。
この場合、5Gの電磁波と健康被害の相関性を確認するには情報も根拠も不十分と考えられます

英ゲーツヘッドでの流産・鼻血・不眠症といった健康被害

5Gと健康被害 反5G運動家のマークスティール氏
反5運動家のマークスティース氏(Image: Newcastle Chronicle)

イギリスで最も古いタブロイド紙DailyMailが報じた、5Gが導入されたイギリスのゲーツヘッドでの健康被害についての記事が話題を呼びました。

その内容というのが、ゲーツヘッドでLEDランプ一体型の5Gアンテナを設置してから、流産、鼻血、不眠症といった健康被害が発生していることが、反5G運動活動を主導しているマークスティール氏から報告されている。というもの。

Source:https://www.dailymail.co.uk/health/article-5409921/Residents-enduring-stillbirths-street-lamps.html

流産の確率は意外と高い

流産の可能性は意外と高く、流産の割合が一番低い30〜34歳でも10%となっています。
Source:「不妊に悩む方への特定治療支援事業等の
あり方に関する検討会」

ゲーツヘッドの2018年度の0歳児は2,058人でした。
流産率が10%として、最低でも200人以上はその年に流産した計算になります。
(数学の専門家ではないため、単純な計算にはなりますが。)

DailyMailによると、マークスティール氏は「流産した3人の女性を知っている」と述べています。

鼻血や不眠症は体質や生活習慣が関係する

鼻血に関してはアレルギー性鼻炎や、子供であれば鼻いじりなどで頻繁に発生する人もいます。
さらに、マークスティール氏に鼻血の被害を訴えた人物は11歳の少年と55歳の女性。どちらも鼻血の発生が多い年齢です。
Source:大人と子どもで違う原因。意外と知らない鼻血のこと | 社会福祉法人 恩賜財団 済生会

不眠症に関しても仕事、ストレス、生活習慣などで簡単に発症します。
5Gの電磁波が原因と考えるにはあまりにも情報が少ないと考えます。

まだまだ調査が必要

また、DailyMailの記事の情報源のほとんどが、反5G運動家のマークスティール氏によるものであること、
流産、鼻血、不眠症のどれもが、5Gによる電磁波以外の原因を調査していないか、公開されていないことを考えると、
これらの体調不良と5Gの電磁波を相関付けるのは難しいのではないでしょうか。

電波過敏症

5Gと健康被害 電波過敏症について

電波に対して感受性が高く、長時間の電波や、強い出力の電波に暴露することで体調不良になる。といった症状を訴える方たちがいます。

こういった症状は「電磁波過敏症」と呼ばれることが多く、症状を強く自覚している人もいる。

科学的には認められていない

結論として、「電磁波と電磁波過敏症の相関関係はない」というのが現在の科学的な見解です。

電磁波過敏症の人を対象に、二重盲検法(いわゆる偽薬テスト)を実施しましたが、電磁波の影響と被験者の症状を結びつけるのは非常に難しいとのこと。
明治大学科学コミュニケーション研究所が様々な研究論文から結論を出しています。
Source:電磁波有害説 | 疑似科学とされるものの科学性評定サイト/特定課題研究ユニット詳細 2015年度 | 明治大学

【結論】科学的には電磁波は悪ではない、しかし、、、

電磁波による健康被害は根拠が少なく、科学的な立ち位置としては、
電磁波を理由とする健康被害は確認できない、というが現状です。

人間はネガティブなものに、より反応しやすい傾向がある、という話は心理学では有名です。
不安を煽って人を騙すマッチポンプ商法といった詐欺も存在するので、情報に惑わされないために注意が必要です。(関連記事:頭の良さは関係ない!?フェイクニュースの事例と対策)

電磁波の影響は、現状は危険という認識はできません
しかし、「非熱作用」というものが広義として認知されているように、
電磁波の特性を完全に把握できているわけではないのも事実です。

電磁波と健康については、引き続きその動向を確認する必要があります。

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